膵嚢胞やIPMNの経過観察をしていると、「画像の検査を待つしかないのだろうか」「血液で分かるようになればいいのに」と思うことがあります。その血液検査の研究で、2026年9月に大きな発表がありました。まだ研究段階ですが、経過観察中の人にも関わる内容なので、数字を一次情報で確かめてまとめました。
どんな研究か
米国のがん研究機関City of Hopeを中心とする国際チームが、2026年9月16日、医学誌Nature Medicineに結果を発表しました。
- 4つの国の施設が参加し、膵臓がんのある人とない人、あわせて1,785人を対象にした前向きの観察研究です
- 調べたのはPANXEONという血液検査。血液中のマイクロRNA(10種類。血液中を流れるものと、エクソソームという小さな袋に入ったもの)と、腫瘍マーカーのCA19-9を測り、AIでひとつのスコアにまとめます
CA19-9は、いまも経過観察の血液検査でよく使われている項目です。それ単独ではなく、ほかの目印と組み合わせて精度を上げよう、という発想です。
どのくらい見つけられたのか
膵臓がんは、約9割が進行した段階で見つかっているのが現状です。この研究では、
- 早い段階(ステージ1〜2)の膵臓がんの86.8%を検出しました
- 一方で、がんがないのに陽性と出る「偽陽性」は、リスクの低い人で3.2%、膵嚢胞や慢性膵炎などリスクの高い人では15.6%ありました
高い検出率と同時に、偽陽性が一定の割合であることも、論文にはっきり書かれています。もしこうした検査が将来使われるようになっても、「陽性=がん」ではなく、「くわしく調べたほうがよい人を絞る」ための検査だと研究チームは位置づけています。画像検査の置き換えではありません。
膵嚢胞のある人との関わり
この研究には、膵嚢胞のある人にとって気になる結果が含まれています。
- リスクが高いとされる膵嚢胞のある人のうち、高度異形成(がんになる一歩手前の状態で、「ステージ0」と呼ばれることもあります)を64.3%で検出しました
- 研究チームが対象として想定しているのは、家族に膵臓がんの人がいる、遺伝的な背景がある、膵嚢胞がある、慢性膵炎がある、といった「経過を見ている人たち」です
つまり、健康な人みんなを対象にした検診ではなく、いままさに経過観察をしている層のための検査として研究されています。
まだ研究段階です
PANXEONは承認された検査ではなく、病院で受けられるものではありません。論文自体も、「既存の方法を補いうる」としたうえで、さらに大規模な前向き研究が必要だと結んでいます。実用化されるのか、いつになるのかは、現時点では分かりません。
それでも、「血液で早く見つける」研究が、健康な人との比較だけでなく、膵嚢胞のある人を実際に含めて進められていること自体が、経過観察をしている側には意味のある変化だと思います。
次の検査までの時間に
経過観察は、いまはMRCPやエコー、CA19-9などで続いていきます。その間にも、見つける側の研究はこうして少しずつ進んでいます。次の検査までの時間は、ただ待つだけの時間ではなく、研究が進むのを待つ時間でもあります。
けいかろくでは、名前もメールアドレスも出さずに自分の検査の記録を置き、同じ大きさ・同じパターンの人の「その後」を数字で見ることができます。待つ時間のお守りがわりに、どうぞ。
※ この記事は、運営者が公開情報をもとにまとめたものです。医療の助言ではありません。検査や治療の判断は、かならず主治医とご相談ください。
出典
- Nature Medicine「Liquid biopsy for early detection of pancreatic ductal adenocarcinoma」(2026年9月16日) Nature Medicine
- City of Hope「New Study: Blood Test Shows Promise for Detecting Pancreatic Cancer at Its Earliest Stages」(2026年9月15日) City of Hope