IPMN・膵嚢胞の経過観察をしていると、頭のどこかに「もし、がんになったら」という問いがあります。その「もし」の先にある治療の側で、2026年8月に大きなニュースがありました。
RASとは
膵臓がんの9割以上では、KRASという遺伝子に、がんを進める変化が起きているとされています。KRASは「RAS」と呼ばれる遺伝子の仲間のひとつです。
ここを狙えれば膵臓がんの治療が変わる、と長く考えられてきました。けれど、薬で止めるのがとても難しい場所でした。
何が承認されたのか
- 承認日: 2026年8月26日(米国食品医薬品局 FDA)
- 薬: ダラクソンラシブ(daraxonrasib)、製品名ラソンク(Rasonque)。1日1回飲む錠剤
- 対象: 転移のある膵臓がん(膵管腺がん)の成人で、すでに全身治療を1つ以上受けた人、または複数の抗がん剤を組み合わせる治療が難しい人
- 根拠になった試験: 北米・欧州・アジアで500人が参加した試験。これまでの抗がん剤と比べて、生存期間の中央値がおよそ2倍に延びた
- 主な副作用: 発疹、下痢、口内炎、吐き気、だるさなど
膵臓がんで、RASを狙う薬が承認されたのは初めてです。
日本では
この記事の時点で、日本で使えるようになる時期は分かっていません。治療を受けている方は、主治医に相談してください。
患者さんたちの受け止め
米国で最も大きな膵臓がんの患者団体(PanCAN)は、承認の日に声明を出し、膵臓がんの治療でもっとも大きな前進のひとつだと受け止めました。生存期間だけでなく、抗がん剤より暮らしの質がよかったことにも触れています。
試験に参加した患者さんの話も報じられています。点滴に通う抗がん剤とちがい、毎日家で錠剤を飲む治療で、副作用と付き合いながら日々を過ごしている人もいます。効き方は一人ひとり違いますが、治療を受けながら暮らしを続けられることの意味は大きいと感じます。
経過観察中の人にとって
この薬は、いま経過観察をしている人が使うものではありません。直接の関係は、ほとんどありません。
それでも、「見つける力」(画像のAIや血液の検査の研究)と、「見つかったあとの治療」の両方が、少しずつ前に進んでいます。次の検査までの時間に考える「もし」の先は、数年前より少しだけ明るくなっています。
※ この記事は、運営者が公開情報をもとにまとめたものです。医療の助言ではありません。治療の判断は、かならず主治医とご相談ください。
出典
- 米国食品医薬品局(FDA)「FDA Approves First-in-Class Targeted Therapy for Metastatic Pancreatic Cancer」(2026年8月26日) FDA
- ダナ・ファーバーがん研究所の発表(2026年) Dana-Farber
- 米国の膵臓がん患者団体 PanCAN の声明(2026年8月26日) PanCAN
- NBC News(試験に参加した患者さんの話、2026年5月31日) NBC News